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北山淳の小説投稿サイト(ブログ)です。

ソードアート・オンラインSSインタラクト・ソウル 第2章

 
 
 2
 
 
「凄かったでしょ」
 
「直葉ちゃん、凄い上手なんだね」
 
「いや、ボーリングでアベレージ二百越えは反則だ」
 
「あとからなら幾らでも言えるんだよ、お兄ちゃん」
 
「ふふっ、キリト君、力み過ぎてすっごい滑ってたもんね」
 
「あっ、あの床がイレギュラーなんだよっ!!」
 
「お兄ちゃん、素直じゃないなぁー」
 
「うううっ、うるさいっ!!」
 
 俺たちは《AAOサーバー室》を出たあと、アライアンス・ゲート内でアトラクションを満喫していた。
 
 俺的にはスポーツチャンバラなんてアトラクションが一番楽しかった。あまりにも白熱し過ぎて凄い人数のギャラリーができていたことに全く気付くことができなかったのが災いし、ついソードスキルモーションを取ろうとしていた明日奈は顔を真っ赤にして全速力でその場から逃げ出してしまった。それには俺も直葉も笑ったものだ。
 
 そして最後にやったボーリングでは直葉が完全勝利を収め、俺は完全敗北に帰した。アベレージ差百以上。これほどの差を見せ付けられては文句の一つぐらい出てくるもんだ。
 
「むぅ……」
 
「お兄ちゃん、まだ根に持ってるの!?」
 
「キリト君ったら、未練たらし過ぎるのよ」
 
「だってさぁ……」
 
「だってじゃない」
 
 俺が言う前に明日奈に押し切られる。
 
「キリト君。二言は……ないよね?」
 
 明日奈は凄みのある剣幕で俺を睨む。
 
「う……、ないです」
 
 すると、明日奈はふっと引き下がってくれた。はっきり言ってこれは心臓に悪い。
 
「ねぇ、お兄ちゃん……」
 
「どうした? スグ」
 
 直葉は眉を寄せながらで携帯端末のディスプレイを向けてきた。俺は仰け反りながらもそれを見る。
 
「うぉ……っ」
 
 ディスプレイに映り出されていたのは現在時刻。
 
 いまの今まで時間なんて気にしていなかったが想像以上に時間が経っていたらしい。具体的には帰りの電車がもう終電しかない。
 
「そろそろここを出ないと帰れなくなっちゃうよ」
 
 直葉の言うことは最もだ。
 
 明日奈はクスッと笑うと「そうね」と続けた。
 
「それじゃ、今日はもう暗いし、お開きにしますか。わたしも夕飯に遅れてお母さん怒ってるんじゃないかと思うし」
 
「そうだな。今日はここまでにして、また来よう。まだ遊んでないところもあるしな」
 
「そうだね」
 
 直葉も大きく頷いた。
 
「それじゃあね。キリト君、直葉ちゃん」
 
 明日奈は手を振って闇の中に消えていく。一人で帰るのであろう明日奈の後ろ姿を見ると少し寂しそうにも見えてきて声をかけずにはいられなかった。
 
アスナっ! やっぱり一人じゃアレだし、送って行こうか?」
 
「ううん。今日はいいよ。家はここからすぐだから」
 
「そうか?」
 
「うん、ありがと。それじゃ、また明日」
 
 明日奈は笑顔を見せる。
 
「おう。また明日な」
 
 そのまま明日奈は手を振り、俺たちも振り返す。そして明日奈が見えなくなると俺は直葉に向いた。
 
「よしっ、帰るか」
 
「うん」
 
 俺たちは家に向かって歩き始める。見覚えのある店、見覚えのある住宅街。そうしたものが俺に昔のことを思い起こさせる。
 
「なあ、スグ?」
 
「なに? お兄ちゃん。改まって」
 
「いや、こうやって二人で歩いていると昔のこと思い出すなってさ……」
 
「そうだね」
 
「昔はよく手を繋いで家に帰ったよな」
 
「……」
 
 途端に直葉は押し黙った。
 
 もしかして、何かまずいことでも言ってしまっただろうか。相変わらず俺には対女性スキルが身に付いていないらしい。
 
「あ、俺……」「あのね……」
 
 なんとか弁解しようとしたのだが、直葉も何かを言おうとして口ごもってしまう。
 
 長い沈黙のあと直葉は立ち止まって俯き加減に口を開いた。
 
「……あのね、お兄ちゃん。手……また昔みたいに手繋いでよ」
 
「スグ」
 
「ふぇ……? ……っ!!」
 
 そう言う直葉の手を俺は迷わず握った。なんで握ってしまったのか考えても理由は出てこないが、ただ、そうするのが一番いいと思ったのだ。しかし、高校生にもなった妹と手を繋いで歩くのは馴れたものではない。
 
 だから俺は込み上げる気恥ずかしさをそのまま口にした。
 
「……なんか、この歳になるとちょっと恥ずかしいな」
 
 俺は直葉の顔を見ていれなくなって視線を逸らす。
 
 直葉は最初は驚きに目を見開いたが、すぐ顔を赤らめた。
 
「……ありがと」
 
「……どう致しまして」
 
 俺たちは最初こそ無言だったが、そのまま仲良く手を繋いで家まで帰った。学校ではどうだの、アメリカの親父がどうだのと他愛のない話に花を咲かせて。
 
 まるでそのときだけは、幼い頃に戻った、そんな気分だった。
 
 
 
 
 次の日。学校から帰った俺はリビングで冷蔵庫に買ってきた野菜類を詰め込んでいる直葉に先にALOで待っていると伝えて自室のベッドに転がり込み、アミュスフィアの電源を入れ、いつものようにアミュスフィアの輪状のヘッドギアを被る。
 
「あれ……? ALOにログインできない……」
 
 いつもならロード画面が表示されるはずなのに、何故か接続エラーになってしまう。アミュスフィアが壊れたか?いや違うな。ALOの定期メンテナンスか?いや違う。そうじゃないなら……、そうじゃないとしたら。
 
 残された答えは一つしかない。
 
「ユイっ。いるか?」
 
 俺は慌てつつ、据え置きPCのマイクに向かって話しかける。
 
『はい、どうしたんですか? パパ』
 
「ちょっと調べて貰いたいことがあるんだけど、いいか?」
 
『そんな慌ててどうしたんですか? 何かあったんですか?』
 
「ああ、実は……」
 
『パパ……?』
 
「……もしかしたらALOがなくなってるかもしれないんだ」
 
『ALOが……なくなったかもしれない?』
 
「俺も信じたくはないんだけどログインできないんだ。理由は多分それしかない……と思う」
 
『そんな……』
 
「でも、まだあくまで予測だ。だからユイ、調べてくれるか?」
 
『はい。少し待ってくださいね』
 
 そこで一旦ユイとの会話が途切れる。しばらくしてユイは震える声で話し始めた。
 
『パパの推測は正しかったです。本当に……ALOがなくなってます……』
 
「な……っ」
 
 予測はしていても一番最悪な事実を肯定されると言葉が出ない。
 
『でも、変です』
 
「何が変なんだ? ALOが予告もなしになくなってることがか?」
 
『いえ……。なくなってるというのはあまり正確ではないですね。正確にはALOのサーバーは存在するのですが、ALOへの直接ログインだけができなくなっているんです』
 
「それって、ALOの管理者側の不手際が原因か?」
 
『それが、そうとも言い切れません。これを見てください』
 
 ユイはPCの画面に四つほどのウィンドウを展開させる。
 
「これは……」
 
『はい。ALOだけじゃありません。同時に他のVRMMOもログインができない状態になっているみたいですね』
 
 画面に映し出されたウィンドウには、GGOなど他のVRMMOが次々ログイン不能になっているという記事。どれも速報の為、詳しい情報は載っていないのが痛いが、逆に今判明していることは全て重要だと言っても過言じゃないだろう。
 
「一体、どういうことだ……?」
 
『考えられるのは二つですね。ALOを始めとする《ザ・シード連結体》規格のVRMMOが外部から全てハッキングされてしまったか、あるいは、外部から各VRMMOに向けたログインを妨害されているか……どちらにせよ、外部からの犯行と見て間違いないですね」
 
「そんなことができるのか?」
 
『できるとすれば、腕の立つ超ハッカーか、……私のようなAIプログラムだけです』
 
 ユイは途中まで言いかけてから途切れ途切れになり押し黙ってしまう。
 
 恐らくユイはもしそのプログラムが自分と同じようなAIであることを信じたくはないのだ。自分と同じ存在がこんな事件を起こしたとして、そいつを敵に回すことになれば自分の立場がなくなってしまうのでは、と危惧したのだろう。
 
「……大丈夫だ、ユイ。もしそんなヤツがいたとしてもユイはユイだ。お前は俺たちの子供だって言ったことは変わらないよ」
 
『パパ……!!』
 
 俺がアスナとSAO内の自宅で保護したとき、ユイはデスゲームと化したSAOプレイヤーたちの負の心によって自我を崩壊させるまでに至っていた。まるで幼子のようにパパ、ママと手を伸ばしてくるユイを見たとき俺はどうしようもなくやるせない気持ちに襲われた。だから俺はせめてこの娘の……ユイのそばにいようと決めたのだ。
 
 そしてそれはユイがAIだったと解ってからも一つとして変わってない。
 
「だから、取り敢えずこの状況をどうにかする方法を考えようぜ」
 
『はいっ!! ……パパ、大好きです!!』
 
 ユイが『大好き』と言ってくれたことに俺は恥ずかしくも嬉しくなる。
 
 間もなくして後ろからかなりのボリュームでノック音が聞こえてきた。
 
「お兄ちゃん大変っ!! ALOに行けなくなってるっ!!」
 
 どうやら一足遅く直葉も状況に気が付いたようだ。それも、かなりの慌てっぷり。あの慌て癖はどうにかできないものかな。
 
「ふぅ……、やれやれ。スグ、いいぜ」
 
 もの凄い勢いでドアが開く。
 
「お兄ちゃんっ、どうしょう…っ!!」
 
 直葉は涙目で俺の肩にしがみついてきた。
 
「解った、スグ。まずは落ち着け」
 
「……うん」
 
 直葉は俺の肩から手を離す。
 
『そんなこと言ってパパだって、さっきまで大慌てだったじゃないですか』
 
「いや、ユイ。それはだな!!」
 
 直葉は一瞬きょてんとして次の瞬間、目を細めた。
 
「ははぁ~ん。お兄ちゃんも慌ててたんだ」
 
 得意気になった直葉は少し質が悪い。
 
 ことに俺は話を逸らす。
 
「いや……と、とにかく、今から皆に招集をかけてくれないか?」
 
「あ、話を逸らしたぁ。……って全員招集って何をするつもり?」
 
「えっと、声をかけやすいのはアスナ、リズ、シリカ、あと学校違うけどシノンもかな。クラインは平日で働いてるし、エギルも店があるし無理だろうなぁ。ま、取り敢えずその四人を家に呼んで作戦を立てる。そして全員で乗り込む」
 
「何処に……?」
 
 俺はにぃーっと笑みを作った。
 
「全てが一つになった夢世界だよ」
 
 俺の言葉に直葉は僅かに目を見開くと、こくんと頷いた。
 
 
 
 
 直葉が皆に片っ端から連絡を取ってくれている間、俺はいきなり出す着信音に少々ビビりながら電話に出た。
 
「キリト君、話聞いたよっ!!」
 
「なんだ、アスナか……」 
 
「何よ。携帯にかけてるんだから、名前が着信表示されるでしょ」
 
「……いや、そこまで見てなかった」
 
「もう……。今電車から降りたから、もう少しで着くからね」
 
「それなら、迎えに行こうか?」
 
「ううん、ちゃんと道は解るから大丈夫だよ」
 
「解った。気をつけてこいよ」
 
 俺はアスナとの通話を切ると机の上に携帯端末を無造作に置いた。「はぁ」とため息を吐いて椅子の背もたれに体重を預ける。
 
 これからどうするのか、この問題が俺の頭の中を掻き乱す。勢いで皆を集めようとしている反面、集まったところで解決できるものなのかという疑問が出てくるのだ。しかし、勘、というやつだろうか。何故かこの状況は自分たちに向けられている気がする。
 
 俺は遠目で白い壁紙しかない面白みのない壁をぼーっと見つめていた。直後、インターホンのチャイムが鳴る。
 
「こんにちは!」
 
「こんにちは、キリトさんっ!」
 
「リズに、シリカもっ!! 来てくれたのか?」
 
 リズベット/篠崎里香と、シリカ/綾野珪子はどうやら二人で仲よく来てくれたようだ。なかなかお目にかかれない私服姿が目を引く。
 
「なーによ。リーファがすぐ来てくれって言うからビックリしたわよ」
 
「そんなこと言ってますけどリズさん、……あとあたしも。呼んでくれたのが凄く嬉しかったんですよ?」
 
「よ、余計なこと言わないっ!!」
 
 里香は顔を真っ赤にしてあたふたする。
 
「はは……詳しいことは中で説明するから」
 
「う、うんっ。それじゃ……」
 
「お邪魔します」
 
 二人はそう言って靴を揃えて家に上がる。
 
「私もいい?」
 
 その声の主は閉まりかけたドアが止め、隙間からその顔を覗かせた。 
 
「シノンっ!!」
 
「こんにちは。一応リアルでは、久しぶりね」
 
「そうだな。……あ、シノンも上がってくれ」
 
「ありがと」
 
 シノンこと朝田詩乃も来たことで残るは、あと一人。
「さて、あとはアスナだけか……」
 
 明日奈はもう来てもいい時間だがまだ来ない。
 
 道にでも迷っただろうか。俺はそう思い、家を出た。
 
 
 
 
 家を出てすぐの曲がり角から声がした。
 
 明日奈とパーカーのフードを深く被った謎の男が何か話しているようだが、明らかにいい雰囲気ではない。
 
「おい、お前確かレクトの社長のとこの娘だろ?」
 
「……はは、人違いではないですか?」
 
 明日奈は引きつった顔で半歩、後退さりする。
 
「とぼけんなよ、なぁ……閃光?」
 
 明日奈は目を見開く。
 
 閃光、それを耳にした俺は無意識に駆け出した。
 
 明日奈が《閃光》と呼ばれていたことを知るのはSAO生還者だけだからだ。つまり、リアルでの襲撃。
 
アスナっ!!」
 
「キリト君っ!?」
 
「フッ、黒の剣士もいたのか……」
 
 男は微笑とともに呟いた。
 
 俺は明日奈と男の間に入って男を睨む。
 
アスナになんの用だ?」
 
「詭弁だな。別に俺は閃光に用があっただけだ」
 
「用……だと?」
 
「まあ、いい。そのうち解る」
 
 男はそう言い残し立ち去った。
 
「……そのうち解る……」
 
 男の言った意味はわからないがもうアスナに接触してくることはないことを祈りたい。
 
「キリト君、わたし……怖かったよ……」
 
 明日奈はわなわな泣きながら俺の胸に顔をうずめる。
 
 俺はすすり泣く明日奈の髪の毛を優しく撫でた。
 
「ごめん……。怖い思いさせて。俺が駅まで迎えに行けばよかったな」
 
「ううん。キリト君の所為じゃない」
 
「俺、君を守るって約束したのに……」
 
「キリト君はわたしを守ってくれたよ。助けにきてくれて……ありがとうっ」
 
 笑顔を作りながらも目から溢れ出す涙を止められない明日奈に俺はそっと手を回す。
 
「……!!」
 
「……アスナは強いんだな」
 
「そんなことない。わたし……怖かった。キリト君に嫌われるのが怖かったの。本当はちょっとしたことで涙が出ちゃうくらい弱いのに、キリト君が求めているのは強いわたしなんだって、ずっと……」
 
「そんなことない。確かに、いつも見ていたアスナは強くてどんなことにも冷静だったけど、俺はそんなアスナだけを好きになったんじゃない。……SAOで俺、アスナが側に居てくれるだけで凄く安心した。圏内事件のとき俺は言ったはずだぜ。あとから好きな人の違う一面に気付いて、そこも好きになれたら二倍だって。だから、これから俺はアスナのこと二倍好きになるよ」
 
「キリト君……」
 
 俺は今できる限りの一番の笑顔をした。
 
アスナ。辛いことも、嬉しいこともお互いに共有できたら嬉しいな」
 
「ふふっ。キリト君、大好きだよ」
 
 明日奈と俺の唇が触れ合う。傷つく痛みを分かち合うように、お互いの気持ちを確認し合うように、強く。
 
 俺はそのまましばらく明日奈を抱きしめていた。
 
 
 
 
「ちょっとキリト、ずいぶんと遅かったじゃないの?」
 
 明日奈を連れて家まで戻ってきた俺は早速、里香に咎められる。
 
「そうよ。アスナさん迎えてに行ったのは解ってたけど少し遅過ぎるんじゃない?」
 
 と直葉。
 
「えっと……そのことも含めて話があるんだ」
 
 
 俺はALOや他のVRMMOがログイン不能状態になっていること、原因は外部の人間の犯行である可能性があること、アスナが襲われたことを話した。全てを説明し終えるにはおよそ三十分を要した。
 
「そんな……アスナさんが狙われるなんて」
 
 珪子は恐怖に腕を抱える。
 
アスナ、その男に覚えはあるの?」
 
 と詩乃は訪ねたが明日奈は首を横に振った。
 
「でも、何かありそうよね……」
 
「何がだ? リズ」
 
アスナを襲った男とログイン不能の件は繋がっているような感じがするのよ」
 
「そうだよ、お兄ちゃん。だって、アスナさんがレクトの社長の娘だって知ってて接触してきたのも引っかかるし……」
 
 それには俺を含めて全員が頷く。
 
「同一犯だとすると目的はなんなのかしら」
 
 詩乃は腕を組んで唸り出す。他も同様に各々考えているようだ。一頻り考えたあと、俺は一つの結論に至る。
 
「シノン、レクトが《アライアンス・ゲート》っていうアミューズメント施設に物凄い投資をしたのは知ってるか?」
 
「勿論よ。そこで新しいVRMMOの実験を……ってまさか」
 
「そのまさかさ。この一連の事件、同一犯と考えると犯人が狙っているのはアスナじゃなく、《AAO》――《アライアンス・オンライン》だと見て間違いないだろう」
 
「全VRMMO統合型VRMMO……」
 
「そうだ。多分、ヤツは《ザ・シード連結体》その全てをシェアするつもりなんだ」
 
「なんのために……?」
 
「さあな、そこまでは俺も想像しかねる」
 
「キリトさん……」
 
「なんだ? シリカ」
 
「思ったんですけど犯人が狙っているはずのAAOはまだ発売もダウンロードも始まってないですよね?」
 
「いや……そこが俺たちの強みなんだ」
 
「え?」
 
「ヤツは今世界に存在するVRMMOの全てを手にした……」
 
「ダメじゃない」
 
「り、リズ、話は終わってないぞ。……こほんっ、つまりだ。ヤツの計画はたぶん本来ならこれでよかったんだ。だけど全てを手に入れたはずがそうじゃなくなった」
 
「でもさっき、今世界に存在するVRMMOの全てを手にしたって……」
 
「そう、そこだ。ヤツにとっては計画にないイレギュラーな展開だったんだろうさ。これから誕生するAAOは。そしてAAO自体俺たち側にあると言っていい」
 
「どういうこと? キリト君」
 
アスナ、現在AAOのメインサーバーを所有しているのはレクトだ。そしてこっちにはアスナがいる」
 
 そこまで言ってわかったのか、明日奈は苦笑する。
 
「わたしがなんとかAAOを稼動するための許可を取って中からどこかのフィールドにいる犯人を探し出す……そういうことね」
 
「ああ、それしか、犯人に接触する手はない……と思う」
 
「でも……」
 
 直葉がおずおずと手を挙げる。
 
「いくら統合型でも、ALOやGGOのログインができない今、世界に入って探す……なんてできるの?」
 
「できないのは直接ログインだけだってユイは言ってた。つまり、AAOを介してならアクセスできる可能性はある。AAOは本来、コンバートしないで同じゲームに在駐するようなプレイヤーでも他のゲームの人たちと交流できるようにすることを目的としているからな。新たにALOとかに通じる扉を作り出せるはずだ」
 
「なるほど」
 
 里香たちも同じことを思ったらしいが解決して貰えたようだ。
 
「そうと決まれば、話は早いですよ。キリトさん」
 
「そうね、もう選択肢は一つしかないじゃない?」
 
 リズベットの言葉に全員が頷く。
 
「お兄ちゃんっ」
 
「キリト」
 
「キリト君っ」
 
 どうやら俺たちのやることは、一つのようだ。
 
「じゃあ、行こうか。俺たちの大切なものを取り返すために」
 
 
〈続く〉